重厚な作りの時代を感じさせる部屋。
そこに置かれたこれも年代物のしっかりした作りの机。
揃いの椅子に座り一人の青年が、なにか書き物をしていた。
が、手に持っていた羽ペンを机上に放り投げ。
つまらなそうに呟いた。
「飽きたな。」
青年は立ち上がると、壁に掛けておいた黒いマントをふわりと羽織る。
そしてちょっと考え込み。
さもいいことを思い付いたと、口の端を上げる。
「今日は、少し遠くへ行くか。」
金と碧の瞳を伏せ。
その長いマントを翻す。
瞬間。
不可思議な風と光で部屋が満たされる。
だがそれも一瞬で消え。
それとともに黒い髪の青年の姿もなかった。
最初から。
そこに存在しなかった様に。
そう。
これが、全ての始まりだった。
きっかけは、いつもの彼の気まぐれ。
でも、それは運命の歯車を回し。
心の流転を誘う。
そして。
二つの宇宙の命運と。
一人の少女の未来が。
今、一人の青年によって動き始めた。